【10分で理解】1人会社 合同会社設立の最短ルート

1人会社 合同会社設立の最短ルート

今回は合同会社を設立するにあたって、具体的に必要となる書類と手続きをまとめてみました。最低限これだけやれば合同会社が設立できるように、具体的でわかりやすく解説したいと思います。

全くの無知の方が10分で概要を理解してもらえることを目標にしています。

なお、この記事は2022年4月に、実際に私が千葉県で合同会社を設立したときの情報をそのまま記載しています。時期によっては法律などが変わっているかもしれないので、手間を省きたければ、法務局HPを見たり、直接問い合わせたりしたほうがよろしいかもしれません。

また、1人会社で消費税の免税事業者(売上1,000万円以下)の法人を設立することを想定しています。

目次

  • 1.手続きの流れ
  • 2.必要書類
  • 3.費用
  • 4.まとめ

1.手続きの流れ

1-1.全体の流れ

①定款作成

②出資の履行

③設立の登記申請

④会社設立後の諸手続

まずは、法務局の「合同会社の設立手続について」というHPを読んでみましょう。

法務省:合同会社の設立手続について (moj.go.jp)

 

1-2.定款作成

定款の記載事項には、絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項がありますが、まずはひな形を基に作成すれば特段問題ないかと思います。

なお、ポイントとしては、定款は一度作成したのちに変更すると3万円の費用が掛かります。そのため、絶対的記載事項のうち、会社の事業を示す「目的」という項目は、設立時に始める事業内容のみならず、今後展開することを予定している事業を幅広に記載するほうが良いです。

なお、後述しますが定款認証には紙定款と電子定款があり、紙定款では4万円の印紙税がかかります。電子定款は自分でやると難しいのですが、たくさんの代行業者があり、そちらに頼む方が結果的に安くなります。いずれの場合も定款に記載する内容には違いはなく、実務に影響が及ぶことは全くありません。

 

1-3.出資の履行

合同会社の定款で定められた資本金の金額について、出資の履行を行います。金銭と現物出資の方法がありますが、分かりやすいのは金銭ですので、現物出資の説明は割愛します。

なお、合同会社では、出資の履行といっても銀行口座等に預け入れる必要はなく、手元に現金として用意したうえで、後述する「払込みがあったことを証する書面」さえ作れば問題ありません。

出資額をいくらにするかについては、3-6か月の事業運営に当たり必要となる金額とすればよいかと思います。

 

1-4.設立の登記申請

設立登記申請書類(後述)を持参して、管轄の法務局で当期の申請を行います。

設立登記の申請は各都道府県の法務局の本庁でしか受付を行っていないので、ご注意ください。

内容に問題がなければ申請から約7〜10日で登記が完了し、法務局が申請を受け付けた日が会社設立日となります。法務局側から登記完了の連絡はありませんが、法人登記の完了の2日後頃に、法人番号指定通知書が本店住所に届きますので、こちらで法人設立登記が完了したことを確認することができます。

なお、問題がある場合は、法務局から連絡があります。

 

1-5.会社設立後の諸手続き

法人登記を行うには、そこそこの手間がかかりますが、法人設立後も直ちに行わなくてはいけないことがまだまだあります。1人会社では基本的に税務署だけでOKです。

なお、少しややこしいですが、法人税に関する届け出は税務署(国税)、県税事務所(県民税)、市区町村役場(市民税)の3か所あり、確定申告や納付もそれぞれに行う必要がありますので、ご注意ください。

【税務署に提出する書類】

・法人設立届出書(会社設立後2カ月以内)

・給与支払事務所(開設から1か月以内)

・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

青色申告の承認申請書

都道府県税事務所に提出する書類】

・法人設立届出書

【市役所に提出する書類】

・法人設立届出書

 

2.必要書類

1-1.必要書類一覧

1人会社の合同会社の設立登記に当たり必要となる書類は以下の通りです。

法務局のHPにフォーマットがあり、そのフォーマットを埋めるだけで意外と簡単に作成することができます。「定款」と「払込みがあったことを証する書面」については、以下で少し補足します。

合同会社設立登記申請書

・定款

代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面

代表社員の就任承諾書

・払込みがあったことを証する書面

・資本金の額の計上に関する代表社員の証明書

 

1-2.定款について

定款の内容については、ネットで調べればいくらでも出てくるので、注意点としては後から定款変更が必要にならないように、できるだけ幅広に目的を記載しておくこと、また目的のなかで、「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という文言を入れておくこと暗いかと思います。

後は、4万円の印紙税を節約するための電子定款の方法ですが、電子定款を行うためには、定款への電子署名という手続きが必要となります。これを行うためには、PDFファイルを編集するためのソフトと、ICカードリーダーというのが最低限必要になります。

結構面倒なので、ネットで格安で電子署名代行業者を探した方が結果的に安くつきます。(私もそのように対応しました。4,000円弱でやってくれました。)どこでもサービス内容に違いはないので、安いところを探して頼んでしまうことをお勧めします。

 

1-3.払込みがあったことを証する書面

こちらもちょっとややこしいですが、合同会社の場合は、新しく設立する会社名義で代表者宛に領収書を発行したものがその書面になるということです。こちらも法務局のひな型を見れば理解可能かと思います。

 

参考までに、法務局の記載を転記します。

合同会社については、払込取扱機関に払い込まれた金額を証する書面(代表社員が作成)に払込取扱機関における口座の預金通帳の写し又は取引明細表その他の払込取扱機関が作成した書面を合わせたものを「金銭の払込みがあったことを証する書面」として取り扱うことができます。
払込取扱機関は、内国銀行の日本国内本支店だけでなく、外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行)も含まれます。また、内国銀行の海外支店も払込取扱機関に含まれます。
なお、株式会社のように銀行等の払込取扱機関で金銭の払込みをしなければならないとの制約はありませんので、代表社員の作成に係る出資金領収書等を添付することでも差し支えありません。

 

3.費用

合同会社設立にあたって必ず必要となる費用としては、

1.登録免許税(6万円)

2.定款の収入印紙(4万円)なお、電子定款の場合は、代行手数料4千円で済む)

上記だけです。

ただし、個人事業主の場合は事業がもうからない場合は税金を納める必要はありませんが、法人の場合は、仮に会社の利益が出ていなくても外形標準課税として最低7万円の税金がかかることになるので注意が必要です。(初年度は月割。資本金や従業員数により、もっと多額になりうるが、1人会社では通常7万円で収まります。)

 

4.まとめ

上記の通り、そこそこ複雑ではあるものの、数日準備すれば全く知識のない個人でも合同会社を簡単に設立することができます。個人で事業を行う場合は節税メリットなども考えて、是非一度検討してみてはどうでしょうか。

 

【電帳法】小規模事業者(法人・個人事業主)電帳法虎の巻

小規模事業者が電帳法で対応すべきこと

2022年の法改正にて、個人・法人・規模の大小に関わらず、全ての事業者が電帳法への対応を求められることになりました。

今回は、小規模事業者(個人法人問わず)が最低限対応しなくてはいけない内容のみを簡潔にまとめました。今回はやるべき事のみをシンプルに解説するために、制度の詳細などは割愛していますので、あしからず。

なお、本記事は国税局から出されている、以下の資料を参照しています。

 

■電帳法令和3年改正

0021012-095_03.pdf (nta.go.jp)

0022001-105.pdf (nta.go.jp)

■電帳法令和5年改正

0023003-082.pdf (nta.go.jp)

 

目次

  • 1.結論
  • 2.電帳法の3つの制度
  • 3.まとめ

1.結論

令和5年の税制改正の結果、電帳法への対応のために、従来の処理から変更したり、新たに何かを行わなくてはいけないということはなくなりました。

詳細は後述します。

 

2.電帳法の3つの制度

電帳法には、以下の3つの制度があります。

①電子帳簿等保存(電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存)

②スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を画像データで保存)

③電子取引(電子的に授受した取引情報をデータで保存)

このうち、①と②は任意利用の制度になります。法人・個人・規模に関わらずすべての事業者が対応しなくてはならないのが③になります。

 

③は具体的には、E-mailやWEB上で領収書等を受領した場合、そのデータをそのまま電子データとしてPDF等で保存する必要があるという規定です。

令和3年度改正においては、電子取引に関する資料について、原則は電子データでの保存が必要となっていましたが、経過措置として2023年12月31日までの取引については、電子データを紙に出力して保管する方法も「宥恕措置」として認められていました。

 

令和5年度改正において、この「宥恕措置」が終了するとともに、新たな猶予措置として、以下の措置がなされています。

次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。

イ.保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要です。)

ロ.税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

この要件が良く分からなかったので、税務署に問い合わせたのですが、結局のところ、税務調査等の際に、紙ですぐに提供してもらうことができる状態であれば、電子データとして保存していなくてもよいということになるようです。

つまるところ、紙で適切に保管されているのであれば、従来通りの方法でもよいということのようです。

3.まとめ

電帳法については、国が積極的進めていきたいという一方で、なかなか事業者の方では対応が進んでいないという状況もあり、現状は特段の対応は不要ということになっているようですが、あくまでこれは例外措置であり、いずれは対応が必要となるような改正が行われる可能性もあります。

今のうちに、対応方法を考えていくことも必要かもしれませんね。

 

 

【質問コーナー】 扶養親族にアルバイト以外の収入がある場合の扶養控除対象となるための方法①

【質問コーナー】

扶養親族にアルバイト以外の収入がある場合の扶養控除対象となるための方法①

 

質問内容

扶養対象となっている子供がアルバイトをしているのですが、それとは別に個人で企業から仕事をもらい、収入を得ることとなりました。アルバイトの収入と企業からの収入の合計額が103万円を超えてしまうのですが、その場合は扶養から外れてしまうのでしょうか。

結論

企業からの収入に関する経費などによっては、扶養対象となる。

また法人設立し、当該法人に企業からの収入を留保することで扶養対象とすることも可能である。

目次

 

  • 1.扶養控除について
  • 2.扶養控除を受けるための要件
  • 3.法人設立による所得削減
  • 4.まとめ

1.扶養控除とは

「扶養控除」とは、扶養する親族がいる場合に、その人数に応じて税負担を軽減する制度です。

具体的には、納税者本人に配偶者や子供がいる場合、納税者の所得から一定金額を控除し、納税者の課税所得を厳格することによって、税負担が軽減されることとなります。

扶養控除額は基本的に38万円となりますが、対象となる扶養者が19歳以上23歳未満の場合には、「特定扶養親族」となり63万円が控除されることとなります。

 

2.扶養控除を受けるための要件とは

1.概要

子供の扶養控除については、以下の4つの要件が必要となります。

1.納税者と生計を一にしている。

2.扶養対象者の年間の合計所得金額が48万円以下である。

3.青色申告者又は白色申告者の専業従事者ではない。

4.配偶者以外の親族等から養育を委託された児童ではない。

今回は、質問の対象となっている、2についての詳細を解説します。

 

2.扶養対象者の年間の合計所得金額が48万円以下である

これは一般的に103万円の壁と言われているもので、扶養対象者がアルバイトなどで103万円を超えた給料をもらうようになると、扶養対象から外れてしまうため、この103万円以内に収まる様に調整して働く必要があります。

この103万円というのは、給与所得であった場合の所得であり、給与所得には55万円の給与所得控除がなされるので、103万円-55万円=48万円ということで、103万円いじょうになると、税務上の扶養から外れてしまうということになります。

今回のように、アルバイト先からの給与のほかに企業からの収入(雑所得か事業所得かという別の論点がありますが、今回は事業所得ということにします。)がある場合、以下のような計算になります。

①給与所得(アルバイト先からの給料の年間総額)

②事業所得(企業からの収入ー必要経費)

とした場合、

①ー55万円+②が48万円を超えるような場合には、扶養から外れてしまうということになります。

 

そのため、扶養に入り続けるためには、主に以下の2つの方法が考えられます。

1.アルバイトや企業からの収入を抑えるとともに、必要経費を大きくして、合計で48万円を超えないようにする。

2.法人を設立し、その法人で企業からの収入を受け取り、法人からは給与や報酬をうけとらないようにする。

 

アルバイトと企業からの収入合計が103万円を少し超える程度であれば、1の方法によって扶養に入り続けることも可能ですが、ある程度金額が超えてしまっている場合には、2の方法をとるしかないので、以下で2の方法についての詳細を解説します。

 

3.法人設立による所得削減

法人を設立し、法人名義で企業から収入を得ると、その収入は個人の所得から切り離されることになります。

そのため、法人に利益を残して法人から個人への報酬を支払わないようにすれば、湖心の所得は増えません。

従って、個人の所得としてはアルバイト先からの収入のみとなりますので、その金額が103万円をこえなければ、引き続き親の扶養に入り続けることが可能です。

 

ただし、注意点として、法人を設立する場合、比較的費用が安い合同会社を設立する場合であっても、設立するために10万円程度、また、法人の利益に関わらず外形標準課税として年間7万円(注)、そのほか、法人税や住民税が発生します。さらに、法人で獲得した利益を個人に移す必要がありますが、その際には個人に所得税がかかります。

これらを総合的に勘案して、法人設立が良いか、扶養から外れて個人で所得税を納めるほうが良いかを検討する必要があります。

 

(注)合同会社の外形標準課税の7万円は最も小さい規模の会社の場合。規模が大きくなれば増加するが、法人からの報酬の受け皿程度の規模であれば7万円の規模になると思います。

 

4.まとめ

法人を設立するほうが良いか、扶養から外れるほうがよいかは、場合によって異なりますので、都度検証が必要です。

次の記事で具体的な状況を基にシュミレーションしてみますので、参考になれば幸いです。